秋の特集記事

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島尻のパーントゥ

写真で見たことはあっても、実際に目にすると言葉を失う光景があります。

全身に泥をまとい、木製の仮面をつけた異形の姿。奇声を上げながら集落を走り回り、出会う人すべてに泥を塗りつけていく。これが、宮古島・島尻地区に受け継がれる「パーントゥ」です。

国の重要無形民俗文化財およびユネスコ無形文化遺産にも登録され、世界的にも注目されているこの行事。でも、その本質は観光イベントではありません。島の人たちが何百年も守り続けてきた、神聖な祭祀です。

パーントゥって、何者?

島尻地区のパーントゥは、数百年前に「クバマ」と呼ばれる海岸に黒と赤の仮面が漂着したことが起源とされています。村人たちはこの仮面を海の向こうから訪れた来訪神として崇め、男性が仮面をかぶって集落内を駆け回るようになったのが始まりと伝えられています。

親(ウヤ)、中(ナカ)、子(フファ)。3体のパーントゥは、毎年島尻地区の青年から選ばれます。選ばれた3人が「ンマリガー」と呼ばれる神聖な井戸の底の泥を全身に塗り、シイノキカズラの蔓草を体に巻きつけ、仮面をつけて変身します。

塗られることが、ありがたい

当日になると、まず3体のパーントゥは普段仮面が祀られている元島(旧村)の拝所を訪れ、地域の先輩に挨拶をし、祝い酒を飲み交わします。その後は奇声を発しながら集落をまわり、道中にいる人々を追いかけまわして泥を塗りつけます。

小さな子どもたちは悲鳴をあげて逃げまわりますが、泥を塗られた人は1年間の無病息災を得られるとされています。人のみならず、車や新築の家にも泥を塗りつけますが、地元の人々は汚されて怒るのではなく、むしろ「ありがたい」と感謝して受けとります。

追いかけられて逃げながらも、塗られたら笑顔で感謝する。その光景が、この行事の空気感そのものです。

見に行くなら、知っておいてほしいこと

開催時期は旧暦9月上旬ですが、詳しい日程は開催の約1週間前に発表されます。新暦では例年10月ごろにあたります。日程を事前に確定させることができない行事なので、旅のスケジュールに余裕を持たせておく必要があります。

パーントゥは「観光イベント」ではなく、地元の方が大事にされている神聖な伝統行事です。日程についての問い合わせは、島尻自治会からの正式な公表があるまで待つのが礼儀です。

観光客として訪れる際は、パーントゥが宮古島に伝わる大事な行事であることを理解した上で参加するようにしましょう。泥のニオイは2〜3日取れないのでご注意を。泥を塗られたくない物や貴重品は自衛し、汚れても良い服装でお出かけください。

カメラや服を気にするよりも、全身で受け止める覚悟で行く。それが、この行事に敬意を持って向き合う唯一の方法だと思います。

宮古島の旅で「忘れられない夜」を挙げるとしたら、パーントゥに出会った夜を挙げる人が少なくないのも、うなずける気がします。

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